バリアブルフォント – 柔軟なデザインを可能にする新しい種類のフォント

ワルシャワで開催中のATypIカンファレンスにて、バリアブルフォントと呼ばれる新しいタイプのフォントが世界に紹介されました。Apple、Google、Microsoft、およびアドビが共同で開発したバリアブルフォントは、ジョン ハドソン(John Hudson)の言葉を借りれば「ひとつのファイルでありながら複数のフォントのように動作する」フォントです。ひとつのフォントファイルを使い、ファイルサイズを拡大することなくウェイト(太さ)や幅やその他の属性を無限に変更することができたらどうなるか、またデザインにおいてそれがどのような意味を持つかを想像してみてください。

表示する場所の幅に合わせてグリフの幅をほんの少し拡げたり狭めたりできたらと思ったことはありませんか?あるいは使いたいフォントのx-heightをほんのわずか拡大したかったことは?ブランド表示に使用する書体を、アートディレクションの意図に合うように、その書体デザイナーが意図したとおりの方法で尖らせたり、丸めたりしたかったことは?文字が互いにぶつかることなく見出しがきれいに収まるよう、ディセンダーを気付かないほどわずかに短くしたかったことは?そしてこれらすべてが、レスポンシブデザインの自然な一部としてweb上で即座に行われるとすればどうでしょうか?

Type example
これはエリック・ヴァン・ブロックランド(Erik van Blokland)が作成したレスポンシブレタリングの例です。バリアブルフォントによって可能になるさまざまな柔軟性のひとつがここに示されています。

このような進化を実現するため4社のスタッフが(外部の著名デベロッパーと共に)半年以上にわたって協力し、OpenTypeフォントファイルの規格に大きな改良を加えました。これによって規格に加えられた新テクノロジーであるOpenType Font Variationsにより、フォントデザイナーはフォントのグリフセット全体、あるいは個別のグリフを最大64,000次元のバリエーションの座標軸上で補間することができ、その可能なデザイン空間内の位置を名前付きインスタンス(「Bold」や「Condensed」など)として定義することができるようになりました。技術的な概要と詳細な紹介は、Mediumに掲載されているジョン ハドソン執筆の共同発表をご覧ください。

1990年代初めのフォントフォーマット戦争からは初期のフォント内挿技術が生まれ、また個人のデザイナーがソフトウェア企業と競争しながらそれをさらに発展させ、育成しましたが、OpenTypeバリアブルフォントは単なる共通規格の定義に留まらない、相互運用可能な実装を目的とした新たな協力の成果です。

バリアブルフォントは本物、しかしまだ作業が必要

このような著名企業によるコラボレーションであることを踏まえれば、世界がバリアブルフォントへの移行を開始していると思われるかもしれません。しかしこの新しい種類のフォントを使ってデザインし、人々がそれを読めるようになるまでにはまだ時間と多大な努力が必要です。

私たちにはフォントが必要です。文字デザイナーはバリアブルフォントを作成し、それを提供しなければなりません。このため前述の企業から構成された作業グループは新しいOpenType仕様の詳細をすべて決定すると共に、既存の文字ファミリーをバリアブルフォントのファイルに変換するためのツールを作成しました。アドビのデイビッド レモン(David Lemon)はATypIでのバリアブルフォント発表の際にこの変換のデモを行い、また文字デザイナーとの懇談のため4社すべてからスタッフが今週のATypIに集まりました。

文字デザイナーのうち少なくとも私が話した人々は全員がバリアブルフォントに極めて好意的でした。1990年代にアドビが行ったマルチプルマスターフォントフォーマットの取り組みは(あまりにも時代を先取りしていたため)受け入れられませんでしたが、これは文字デザインのツールやワークフローに確実に影響を与えました。現在の難しい部分はライセンスにあります。バリアブルフォントのビジネス面をどのように取り扱うべきか、まだ誰も知りません。しかし私たちはwebフォントによって同様な状況を経験してきました。適切な解決手段はいずれ見つかります。

フォントを表示することのできるレンダリングエンジンが必要です。フォントを実際に表示するには、文字組みとラスタライズを担うレンダリングエンジンと呼ばれるソフトウェアが表示媒体を問わず求められます。レンダリングエンジンは信じられないほど複雑であり、開発とテストには長い時間が必要です。しかし作業グループにはレンダリングエンジンを扱う人々も加わって協力しています。これは非常に期待できる状況です。

レンダリングエンジンのサポートにはブラウザとデザインソフトウェアが必要です。バリアブルフォントが技術的にレンダリング可能ならそれはすばらしいことですが、しかし使用しているソフトウェアが適切なレンダリングエンジンを選択しない限り意味はありません。これには相当な時間が掛かります。たとえばWindowsのwebブラウザがGDIからDirectWriteに移行するまでには多大な時間を要しました。しかしこれは最終的には実現しました。この作業グループには、ウェブブラウザであるChrome、Safari、およびEdgeを開発した企業の人々が加わっており、また世界で最も良く使用されているデザイン用ソフトウェアを開発する企業からも加わっていることを忘れないでください。

この新しいフォントを使ってデザインするための手段が必要です。このフォントをウェブに使用しようとすれば、CSS規格の一部としてのプロパティと値を適切に定義する必要があります。作業グループはすでにこれに取り組んでおり、喜ばしいことにTypekitのブラム スタイン(Bram Stein)もこれに加わっています。

またデザインツールがタイポグラフィ上の種々の柔軟な判断を支援しようとするなら、それらの判断の内容を明確にし、それらが互いにどのように関連するかを理解していなければなりません。フレキシブルデザインは複雑です。この複雑さを理解して適切なツールを構築できるよう、私自身もTypekitのチーム、アドビ社内の複数の他のチーム、外部のインテグレーター、および読者の皆さんと連携して作業にあたっています。

そして、私たちには皆さんが必要です。本日の発表と献身的な作業グループに共に乾杯してください。これに関するディスカッションはTypeDrawersでフォローすることができます。Typekitでは人々がバリアブルフォントを作成し、見つけ、取得し、また使用することの支援に取り組んでおり、今後もさまざまなことを発信する予定です。質問があれば遠慮なくお寄せください。ぜひお話を伺いたいと思います。

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Tim Brown

Head of Typography for Adobe Typekit & Adobe Type. Practicing typography and web design every day. I write, speak, and make tools to share what I learn. I try to be helpful. I love my wife, kids, family, friends, teachers, and dogs. I'm a volunteer firefighter.